Getting to YES [ハーバード流交渉術] -1 従来の交渉術の問題点

交渉術の中でもっとも有名と思われる「ハーバード流交渉術」の原書です。

本の概要

クルマを買う時には家族で相談して予算や車種や色を決めて(もしかしたらこの段階で交渉が必要かもしれませんね)、その後は営業さんと値引きの駆け引きをします。

仕事で契約を取るのも、納期について取引先と相談するのも交渉。複数の会社が共同で一つの事業をする例はたくさんありますが、それらも交渉。国と国レベルになるといろいろとハイレベルの事案があります。

ごくごく個人的なことから企業対企業、国対国まで様々なタイプの交渉事を効率良く進めていく手法が紹介されています。

原書

邦訳本

この本から知りたいこと

具体的に知りたいことは次の4つ。

  • 「従来の交渉術」の利点と欠点
  • 「ハーバード流交渉術」の利点と欠点
  • 個人がプライベートで直面しそうな交渉時の対応方法
  • 「ハーバード流交渉術」は「交渉」以外に例えば会議での議論などにも使えないだろうか

人には優しく利益(要求・問題)には厳しく

ハーバード流交渉術は「交渉相手との良好な関係」を最も重視します。つまり「交渉すべきテーマ」と「交渉相手の人格や人間性」を切り離して考えます。そして両者が協力して交渉を行い合意を得ることを目指します。

The method of principled negotiation is hard on the merits, soft on the people. (xxxviii)

And separating the people from the problem allows you to deal directly and empathetically with the other negotiator as a human being regardless or any substantive differences, thus making possible an amicable outcome. (P15)

従来の交渉術の問題点

一般的には交渉というと「立場をめぐる駆け引き」を想像します。当事者の立場には

  • 互いの力関係が等しい
  • 互いの力関係に差がある
  • どちらかというと穏便に、友好的に交渉したい
  • 自分の要求を押し通したい、絶対に譲歩したくない

のようなパターンがあります。

ところがお互いが自分の立場を守りつつ理想的な交渉を実現するというのはかなり難しいのです。立場をめぐって駆け引きをすると、次のような状況が考えられます。

  • お互いに友好的な関係なら→穏便に済ませたいのでとても時間がかかる
  • お互いが要求を押し通したいなら→譲歩したくないのでとても時間がかかる、両者の関係が悪くなる
  • 互いの力関係に差があるなら→力が強い方が押し切る形になりがちで両者の関係が悪くなる

ハーバード流が目指す理想的な交渉

Any method of negotiation may be fairly judged by three criteria; It should produce a wise agreement if agreement is possible. It should do be efficient. And it should improve or at least not damage the relationship between the parties. (p4)

  1. 両者が納得できる合意を得ること。
  2. 効率よく交渉を行えること。
  3. 両者の関係を悪化させないこと、できれば以前(交渉前)より良好な関係を築けること。

この3つが満たされたとき、「理想的な交渉ができた」と考えるようです。

ハーバード流交渉術の4つキーワード

この4つを覚えておけばこの本を読んだ!と胸を張ってもいいのではないかしら。

  1. People(交渉相手)
  2. Interests(利益・要求)
  3. Options(選択肢)
  4. Criteria(基準)

つづく。