Getting to YES [ハーバード流交渉術] -2 ハーバード流交渉の進め方

人と問題を切り離そう- Separate the People from the Problem

Don’t blame them for your problem. (p27)
Blaming is an easy mode to fall into, particularly when you feel that the other side is indeed responsible. (p27)

問題が起きたとき、それが相手側に責任がある場合であっても、相手の人格を非難するのはNG。人は非難されると反発モードのスイッチが入ります。そうなると相手の意見に耳を貸さなくなります。

これではコミュニケーションが取れず交渉どころではありません。伝えるべきは非難や批判ではなく客観的な事実。そしてお互いに協力して解決策を考えるべきなのです。

日々の生活においても、いきなり叱られると反省よりも反論したくなるものです。感情的にならないようひと呼吸おいて、まず問題点を整理してから相手に伝えるような心がけが必要ですね。

お互いの利益にフォーカスしよう – Focus on Interests, Not Positions

交渉がスタートしたらまず最初に双方の利益(要求・要望)を確認します。自分の利益を相手に正しく理解してもらうためにはコツがあります。

Inviting the other side to “correct me if I’m wrong” shows your openning, and if they do not correct you, it implies that they accept your description situation. (p52)

会話の最初に「もし自分(の意見や理解)が間違っていたら訂正してください」とひとこと添えてから本題に入ります。相手から訂正がなければ相手は自分の発言を理解したと考えてよいのです。

「correct me if I’m wrong」はとても便利なフレーズです。自分の主張を相手に伝えるときにも使えますし、相手の主張を確認したいときにも使えます。「○○はこういうことですか?」や「△△のところを私はこのように受け取ったのですがそれで正しいですか?」と問いかけてみましょう。

お互いの理解度の確認ができますし、交渉を友好的な形で進めていくうえで必要な、相手に対する礼儀正しさと謙虚さをアピールすることができます。そうすれば、

They tend to think that those who understand them are intelligent and sympathetic people whose owm opinions may be worth listening to. (p53)

相手は「礼儀正しい人の意見は聞く価値がある」と感じてくれるのです。

双方の利益になるようなオプション(選択肢)を探そう- Invest Options for Mutual Gain

双方の利益が確認できたら次はオプション(選択肢)を探します。この段階ではまだ相手に対する要求は絞り込まず、複数の要求事項をピックアップします。

そしてそれらの要求事項に「優先度高」や「優先度は低いけれど相手がすんなりOKしそう」などあらかじめ重みづけをしておきます。そうすれば交渉の場においても「相手がこうきたらこちらはこの手で」というように、合意までの過程が効率よくなるそうです。

客観的な基準に基づいて主張しよう- Insist on Using Objective Criteria

不満を伝える場合、法律や慣習、市場価格など客観的な事実に照らして正当なのか不当なのかを伝えます。すると相手もこちらの主張に対して冷戦に判断をすることができます。
家電を買う時、ただ「いくらまで安くなる?」と聞くよりも他店の広告を持参して「○○電機はこの値段だからこれより引いてくれたら買うよ」と伝える方が店員さんの価格提示がスムーズです。最近はスーパーマーケットでも「他店の広告と比較してください」と掲示しているお店がありますね。

「客観的な基準」の実例(p93-)

自動車を全損したための買い替えの費用を保険会社と交渉するストーリーを紹介します。

保険会社は交渉の初めは「It’s company policy」という発言からわかるように立場を強調した態度を取りますが、対話が進むにつれ「客観的な基準」に基づいた交渉に応じるようになります。なお、日本の自動車保険会社においてこのような交渉が実際に行われるのかについては経験がないのでわかりません。

保険会社(保):163万円お支払いいたします。
ユーザー(ユ):それはわかっていますがその金額で同じ車が購入できると思いますか?
保 :その車はおいくらなのですか?
ユ :車がおよそ212万円で、諸費用を含めて228万円です。
保 :それは無理です。
ユ :いや、228万円欲しいのではなくて適正な補償額はいくらなのかが知りたいんですよ。
保 :わかりました。当社の決まりでは180万円が上限です。

… ユーザーは180万円という金額には納得できません。日を改めることにして、次回の交渉では保険会社の主張する180万円の根拠を提示するように求めました。
→その場で結論を出さず、日を改めて交渉の続きをするというのもハーバード流交渉術のポイントのひとつです。

保 :新聞広告にあなたの希望車種で同じ年式のものが177万円で出ていましたよ。
ユ :そうですか。走行距離は?
保 :79,000kmですが?
ユ :私が目をつけている車の走行距離は40,000kmです。貴社の基準では走行距離に関していくら上乗せがありますか?
保 :19万8千円です。
ユ :車が177万円とすると合わせて196万8千円ですね。広告の車は特別仕様車ですか?
保 :違いますね。
ユ :貴社の基準では特別仕様車にはいくらの上乗せがありますか?
保 :13万2千円になります。

…このようなやりとりが続き、最終的に216万2千円が支払われることとなりました。

「客観的な基準」が具体的にイメージできましたか?

つづく。