シーザー・ミランのCesar’s Way-2 リーダーの資質とフォロワーの資質

犬の群れを人間の組織に例えてみます。組織を存続・発展させていくうえで大切なのはメンバーの役割や組織のルールを決めること。そしてメンバー全員がルールに従って行動することです。

組織には必ずリーダーが必要で、リーダー以外のメンバー(フォロワー)は原則としてリーダーの決定に従います。犬はリーダーやフォロワーをどのように決めているのか、人間の場合と比較してみていきます。

人間の場合

Think about our own species, and the percentage of people who would like to have the power and perks pf the president, or the money and goodies of a Bill Gates. (No. 1517)

 

人間社会の中で『リーダー』といえば、国のトップである大統領や首相。あるいは著名な企業の創業者が思い浮かびます。ビルゲイツやスティーブ・ジョブス、日本ではソニーの盛田さん、本田さんなど(いつもエレクトロニクス系の企業ばかり出てくるのはなぜだろう)。

『カリスマ』と呼ばれる方々はみんな『リーダー』の資質を持っています。優れた技術や努力について語られることが多いですが、他人を引きつけるオーラやパワーが強く人としての魅力にあふれているはずです。

強いパワーを持ちリーダーシップを発揮できる人は少数で、多くの人はリーダーから学び、リーダーを支持するフォロワーです。誰もが激務やプレッシャーに強くプライベートを犠牲にして世のために働き、多くの人から支持される資質を持っているわけではありません。人間の場合『リーダーorフォロワー』は生まれながらのものなのか、育った環境によるものなのか、どちらなんでしょう。

もちろん『リーダー気質』の人が必ずしも社会的にリーダーの立場にいるとは限りません。社会的な立場に関わらず『リーダー気質』の人は、その人が放つ『エネルギー』が高いのです。

犬の場合

犬の性質は生まれたときにすでに決まっているようです。犬には『リーダー気質の犬』と『フォロワー気質の犬』の2つの性質があります。群れ(pack)の秩序を保ち、群れ全体が幸せに生きられるように犬はどちらかの役割を持って生まれてきます。

Every pack has its rituals.

Most important, the pack always has a pack leader. The rest of animals are followers. (No.1498)

 

生まれてすぐの子犬にとって最初のリーダーは母犬です。3~4か月を過ぎると母犬から離れ群れのリーダーに従います。その頃には子犬の行動に生まれ持った性質が現れるようになり、それぞれの犬が持つ性質とエネルギーの強さによって群れの中での順位や立場が決まります。

人間の場合と同じようにほとんどの犬は元来『フォロワー』です。フォロワーはリーダーが用意してくれるルール・境界・制限に従って安心して生きることを望んでいます。

リーダー気質の犬

群れのリーダー(pack leader)は群れ(pack)の全ての行動に責任を負い、決断する役割を果たします。リーダー気質を持って生まれてきた犬はより強いエネルギーを持つリーダー気質の人間でないとうまくつきあっていくのは難しいようです。

見た目には

  • head alert
  • chest forward
  • ears up
  • tail stiff – 尻尾がぴんと立っている
  • swaggers – 堂々としている

のような特徴があります。(No.1545)

フォロワー気質の犬

  • heads in line with their bodies or down
  • stay behind the pack leader while traveling – 移動するときはリーダーの後ろを歩く
  • ears relaxes or back
  • tails wagging but always kept low – 尻尾は低い (No.1536)

フォロワー気質の犬はリーダーに対して『リーダーの存在や指示は絶対的なもの』と信じています。リーダーの座を奪おうなんてこれっぽっちも考えていません。

毅然としたリーダーになろう

ほとんどの犬がフォロワー気質を持っているなら飼い主は犬から信頼されるリーダーの役割を果たさなければなりません。飼い主が頼りないとフォロワーの犬は不安を感じ、精神のバランスを欠いたおかしな状態になってしまいます。

リーダー気質の犬がいつも堂々としているように、飼い主も堂々としていると犬は安心するようです。『私についてこれば君は安心だよ』という気持ちや態度は犬に伝わります。

散歩の仕方を変えてみた

うちの犬、散歩に行くとwalkingというより探し物に忙しく、匂いをかぐばかりでなかなか前に進まない。掃除機のようです。(シーザーのテレビでは『宝探しスタイル』と呼んでました)

この本を読んでから『リーダーは毅然としなければ』と思い散歩中は犬の都合に合わせず私の行きたい方へ私のペースで歩くようにしました。それまで使っていた伸びるリードを短いものに変え、下(犬)を見ないで前を向きます。

犬には必ず私の後ろを歩かせ(フォロワーはリーダーの前に出てはいけない)犬が寄り道しようとしたら『そっちじゃないよ』とリードで合図を送ります。すると犬はすぐに『ああそうだった』と歩くことに集中してくれるんです。

数日のうちに新しい散歩の仕方にすっかり慣れたのか、犬も下でなく前を向き、しっぽは↑にあるように水平に保たれおだやかに揺れます。寄り道もなくなり私の後ろをトコトコついてきます。上手に歩けるようになってから距離がかなり伸びエクササイズとしての散歩ができるようになりました。

ちょっとしたことでこんなに変わるなんて!10年間も掃除機スタイルで散歩していたのに。普段はこんな感じで淡々と歩いてますが、公園に遊びに行ったら長いリードで自由に探検させています。『今は飼い主の後を歩く時間』『今は自由に歩き回る時間』というこちらの意志がちゃんと伝わっているようです。

つづく。