近藤勝重『必ず書ける「3つが基本」の文章術』
ちなみにぼくたちは「3」に絞った言い方をよくします。
三大祭り/三羽ガラス/日本三景…
この「3」が「4」や「5」だと何か広がりすぎて頭に入りにくいでしょうね。3つで十分、というよりその世界が端的にとらえられている感があって説得力があるのです。
確かに。たとえば「朝型人間になるための3つの方法」とあればちょっと試してみようと思いますけど、「朝型人間になるための8つの方法」となっていたら「朝型人間になるのはムリ、あきらめよう」となりますもん。
この本は文章力をアップさせるためのコツを3つの要素を使って説明してくれます。
「どう書くか」で大切なのは、伝わるように書くということです。何より描写力が問われますね。それともう1点、どう組み立てるか。文章の構成も大切です。つまり文章は<1>何を書くか <2>どう書くか <3>どう構成するか - この『3つが基本』で、それぞれにコツがあるんです。
何を書くか
<1>初め(導入) <2>中(展開) <3>終わり(終結)
私的な作文でも、論文のような性質の文書でもこれが基本的な構成です。<3>の終わりの部分で締めないと結局何が言いたいのかわからない文章になってしまいますよね。論文試験の対策で、時間の都合で内容が浅くなったとしても体裁だけは整えるようにと教わったことを思い出します。結論に到達していないと点がもらえないよって。先に結論を決めてから取り掛かるとストーリーが自動的に展開されていくような気がします。
どう書くか
<1>遠景 <2>近景 <3>心模様
感情を表現するときにどう書くか、です。
いったん頭を休め、まわりをあるがままに眺めてみる。
じっと眺めていれば、対象物から受けた感じが心に残るものです。その印象を言葉にできれば、その時の胸中を表現したことになりませんか。
頭の中で考えた言葉と、感性でとらえた言葉とは違います。
どう構成するか
<1>理解 <2>納得 <3>自己表現
納得できないことを書くのはかなり難しいです。「なるほどー」と思うことはこうして紹介することができますが、そもそも意味が分からなかったり「ほんとかな?」と思うことを分かったように書くのは私には無理だなーと思います。「難しくてわからない」とか「本にこう書いてあるけど私はそうは思わない」だったら書けますけど。
つまり、<3>の『自己表現』の部分で納得できたとか納得しかねるといった自分の考えを表現すると深みがある文章が書けるそうです。
まとめ
まえがきにもあるとおりこの本は学生から受けた質問への答えを元にして構成されたそうで、実際に著者の講義を受けているような印象です。途中に練習問題もありますし。文章全体に心地よいリズムが流れていて「これなら私にも何か書けそう」という軽やかな気分にしてくれました。
柴田よしき『風のベーコンサンド』
東京から一人で信州の高原にやってきた若い女性。彼女は訳あって東京の会社を退職し、かつて訪れたことがあるこの高原でカフェを開きます。
古くからの地元民には地元民の悩みがあり、移住組には移住組の悩みがあります。それでも決して観光客が多いとはいえない高原を盛り上げようと両者が協力する中で、主人公のカフェがだんだんと発展していく様子は、夢が実現していく過程を見ているようで微笑ましくもあり、ある意味おとぎ話のようでした。
が、しかし。主人公が移住した『理由』がかなり詳細に描写されます。のほほんと読んでいた気分が変な現実の世界に引き戻される感じで、かなり違和感がありました。私としては彼女の重い話については特に説明してくれなくてもよかったなーと思います。さらっと数行で流してくれた方がよかった。
とはいえ違和感を感じるということは印象に残ったということですから、その点では作者の策にはまったのかもしれません。
多少???という部分はあったものの、現在私は長野県に住んでいるので『あのあたりの話かな?』などと想像しながら読むのは楽しかったです。たまに実在の地名も登場します。
タイトルの『ベーコンサンド』はカフェの人気メニュー。おいしそうな料理がたくさん登場します。レシピも少々。