仮説思考というのは、結論を見つけるための手法のひとつで、具体的には
- あらかじめ結論について仮説を立てる
- 仮説を裏付けるためのデータを集める
- データ集めの過程で、仮説に無理があることが分かった時点で別の結論について仮説を立てる
- 新しく設定した仮説を裏付けるためのデータを集める
- 結論が見つかる、あるいは結論の方向性が見えるまで2~4を繰り返す
といった流れの思考・手法となります。
つまり、「とりあえずデータを手当たり次第に集め、データから読み取れる何かを探す」という網羅的手法とは対極のやりかたといえます。
仮説思考を行う目的は、なんといっても時間の短縮。網羅的な手法では、まず網羅するための時間が必要で、網羅した結果、何も答えが見つからなかったらまた最初からデータを集めなおさなければなりません。途中で方向性をミスしたことに気づいても、気づくまでに相当な時間を費やしていることもありえます。
先に結論ありきでデータを集めるなら、対象がある程度絞られてくることから、網羅的にデータを集めるのに比べて時間も手間も大幅に縮小できます。もしも途中で間違いに気付いたとしても、それまでかけてきた工数のしがらみが少ないため、身軽に方向転換が可能です。そんな仮説思考についての本を2冊読みました。
ビジネススクールで身につける仮説思考と分析力―ポケットMBA〈5〉
誰もが知っているサントリーの伊右衛門。伊右衛門のヒットを例に、仮説思考を使って人気商品を生み出す手法をわかりやすく説明してくれます。成功例だけでなく、失敗例も取り上げられています。それは、同じくサントリーから発売されたものの、すぐに市場から消えてしまったお茶のこと。売れた商品と売れなかった商品の比較をすることで、仮説思考の利点がイメージしやすいように構成されています。
仮説思考の入門編として、手に取ってみると良いと思います。
仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
先の本に比べて具体例がはるかに多く、また仮説思考のトレーニング方法も紹介されているのが特徴です。私にとっては、こちらの方が読みやすく頭に入ってくる感じでした。「読みやすさ」や「理解しやすさ」は人それぞれなので、両方比べてみるといいと思います。
この本を読みながらイメージしたのは、「長文を書くときはまず目次から書く」ことでした。結論と、結論に至る過程に登場するキーワードを最初にひとおおりピックアップしてから間を埋めていくという、長文作成の基本的なテクニックです。最初に目次に設定していたキーワードが、書き進むうちにつじつまが合わなくなる場合があります。そんなときは、全体のストーリー(後半のストーリー)を変更することになるかもしれません。
あるいは、つじつまが合わなくならないように、途中で新しく思いついたことを諦める必要があるかもしれません。どちらの対応策がベストなのかは場合によりけりですが、最初からストーリーを想定せず思いついたことから書き進めていく方法と比べれば、論理的・効率的なのは当然先に目次ありきの文書作成です。そんなことを考えながら読み終えました。
仮説思考は「思考」なので、どんなタイプの問題についても展開できそうなのですが、2冊とも「戦略的思考」についての本であり、ビジネス本なのでやはり「経営戦略」についての内容です。基本的な経営用語に慣れていない人には若干戸惑いがあるかもしれません。