私の元旦のお雑煮は京風の白味噌仕立て。実家では元旦は白味噌で、2日はもち菜と焼餅のすましと決まっている。けれど西の文化圏から離れたところに住んでいると、白味噌や丸餅やもち菜など、お雑煮に欠かせない素材の入手はなかなか難しく(どこにでもは売っていないということ)、用意周到に心がけていないと大みそかに慌てることになる。
昨年末もぎりぎりになって白味噌のことを思い出して近場で探してみたけれど、やはり納得のいくものは手に入らなかった。お雑煮を諦めかけたとき、頭にひらめいたことがあった。
白味噌を自分で仕込めばいいのだ。
自家製白味噌の作り方は、真藤舞衣子さんの本で知っていた。材料は普通の米味噌と同じで、大豆・米麹・塩・日本酒少々。ただし米麹はかなり多め、塩は入れたのか入れていないのかわからない程度の量(塩分5%を目指す)。「自家製」なら大豆をゆでるところから始めたいが、暮れも押し迫った12月30日のこと。一晩水につけている時間はない。そこで水煮大豆を使うことにした。
水煮大豆はだいたい乾燥大豆の1.5倍の重さということを考慮に入れつつ分量を調整する。豆のゆで汁は普通の味噌を仕込んだときのもの(冷凍してあった)を使った。ゆで汁に大豆を入れて一旦沸騰させ、手で触れるくらいまで冷ます。冷めたらまずゆで汁で麹をふやかし、それから大豆と塩を加え炊飯器の保温で8時間ほど置いておく。
ここまでやってみて、材料の配合と作り方が甘酒とほとんど同じことに気づいてしまった。甘酒は塩は入れないけど。熟成中漂ってくる香りもほとんど甘酒の、米麹の甘いおいしい香り。8時間経って味見をするとほんのり豆風味の甘酒だった。
白味噌のお雑煮やお味噌汁の場合、白味噌以外に塩分を入れないほうがおいしい。だしもしかり。だしは昆布だけでとり、白味噌はたっぷり。普通のお味噌汁に使う味噌の3倍から4倍は入れる。味噌を沢山入れるといくぶんどろっとした汁になり、それが白味噌の汁のらしさではないかと思う。
お雑煮の中身は大根・里芋・にんじんで色味もほんのり甘い野菜の味も白味噌によくなじむ。お餅は丸くなかったとしても、もちろん茹でたもの。最後に糸カツオをはらり。なんとも幸せなお雑煮だった。
さて、まだ白味噌はたくさん残っている。使い道を考えるのもまた楽しいのである。