荻窪の書店「Title」

ある日高円寺に用があり、せっかく都内に出るので近くで楽しめるところがないかと探して見つけた書店「Title」。

「新しい町の本屋」というジャンルがあるようで、「Title」はまさに新しい町の本屋のひとつと言えると思う。「新しい町の本屋」は、私が独断で定義すると

  1. たとえばジュンク堂のようにありとあらゆる種類の本を揃えている大型書店ではなく
  2. 一回の訪問でひととおり全棚を眺められる程度の規模の広さで
  3. 雑誌や文庫など、客層を選ばない出版物は揃っていて
  4. しかし並んでいる本をよく見ると店主の意向が伝わってきて
  5. 立地は必ずしも便利な場所とはいえず、近所に住む人がメインのお客さんで
  6. 本以外にカフェやギャラリーのスペースがある

といったところか。更につけ加えるなら、古めの建物をリノベーションした店舗であることが多いように感じる。2、3、5はいかにも昔からある「町の本屋」で、4と6が足されると「新しい町の本屋」に変身するみたいだ。もっとも、私が気づいていないだけで、昔からある本屋さんだって店主独自の品ぞろえをしているのかもしれないけれど。

で、「Title」。お店の奥にカフェスペースがあり、チーズケーキとコーヒーをいただいた。ここで出してくれるチーズケーキは上下をビスケットで挟んだ、今まで見たことがないタイプのもの。私はどっしり濃厚なニューヨークタイプのものが好きなので、とてもおいしくいただいた。このチーズケーキはどうやって作るのかと思い、しばし眺めながら考えてみた。味から推測するにビスケットを敷いた上にニューヨークタイプの濃厚チーズクリームを流し込み、焼き目をつけずに焼いてからビスケットでカバーするのだろう。下のビスケットはしっとりしているけれど、上のビスケットは焼いてないと思う。

コーヒーは中煎りと深煎りが選べ、最近は私の中で中煎りがブームなので迷わず中煎りをオーダー。ソーサーにはロータスのビスケットが添えられていた。お会計は本と共通のレジで、あとで本と一緒に支払っても良いとのこと。

若干急に思える階段を上がった2階はギャラリーで訪問時は谷川俊太郎さんの展示が行われていた。写真と詩が散りばめられているなか、引きつけられたのは谷川さんを写した写真の数々。やさしい表情を浮かべた谷川さんに心奪われ、気づくとかなり長居をしていたようだった。谷川さんの手によるご自宅のお気に入り小物の写真もどれもかわいらしく、すっかり温かい気持ちになって階段を下りる。

最後にじっくりじっくり書棚を眺め、2冊選んでお会計。近くに住んでいたら毎日通いたくなるような書店だった。

本屋 Title