犬の目の病気のこと。病気ではなく怪我の部類に入るのかもしれない。
昨年のGW前、今から1年半ほど前のある日、犬の左目が真っ赤になっていた。そして元気なく寝てばかりいる。こんな状態は初めてだけど、食欲はあるから非常事態ではなさそう。2,3日で目は元に戻り、元気が出てきたので病院には行かずそのまま様子を見ていた。(←後にこの判断は誤りだったことが判明)
GW明けて数日後、また目がおかしい。黒目が真っ白で白目は赤い。
13歳のシニア犬なので普段から多少黒目は白っぽいものの、そのときの犬の目はそんな白さではない。急いで病院へ連れて行く。
「スリットランプ検査」を受けた。
不思議な形の装置を使って目の内部の様子を輪切りで撮影していく。CTみたいに。
検査の前には虹彩を開くための目薬をさして30分程待つ。待っている時間は、犬にとっても私にとってもなかなかにつらく長かった。
検査自体はすぐに終わり、画像もすぐに見せてもらえる。
先生の口から驚きの言葉が!
「水晶体をつなぐ筋肉が切れてます」
水晶体は、本来上下にある紐のような筋肉(チン氏帯)で眼球内部につながっているのだが、チン氏帯が切れたため、水晶体が正常な位置から外れてしまっているとのこと。この状態を「水晶体脱臼」と呼ぶのだそうだ。さらに、水晶体があるべき位置より後方にあり、網膜を圧迫しているときを「水晶体後方脱臼」、前方にあり角膜を圧迫している状態を「水晶体前方脱臼」と呼ぶ。
一刻を争うのは前方脱臼で、角膜が圧迫されることで眼圧が上がり、長時間この状態が続くと失明する可能性が高いそうだ。あとから考えてみると、最初の発症時、白目が真っ赤で元気もなかったときは、前方脱臼を起こしていたようだ。たまたま運がよく、水晶体がひとりでに正常な位置に戻ってくれたから事なきを得たにすぎない。
さて、治療のことを。
切れたチン氏帯は元に戻ることはない。前方脱臼したら処置を受け、日常生活では脱臼しないように予防をする。これは生涯続く。
まず、処置について。
これはとても単純な処置で、前方に飛び出ている(脱臼している)水晶体を物理的に後ろに戻すのである。瞳孔を広げる目薬を差し、瞳孔が開いたら水晶体を指で押しこむ。もちろん先生が。ストンと正しい位置にはまるのがわかる。するとそれまで白く濁っていた黒目が元の色に戻る。濁って見えていたのは光の加減だろう。スリットランプ検査で正しい位置におさまったことを確認したら処置はおしまい。処置の前後で眼圧を測り、処置後に下がっていることを確認する。
次に予防について。
前方脱臼しないように、瞳孔をできるだけ閉じた状態に保つことが予防となる。緑内障の目薬に瞳孔を閉じる作用があるので、定期的に目薬を差す。ハリーの場合は一滴でだいたい12時間効果が続く。よって一日2回の目薬。
これまで私も犬も目薬が差せなかった。けれどそんなことは言ってられない。最初は噛みつかれもした(目薬を噛もうとする)。意識を他に向けるため、散歩中に差したりもした。1か月ほどが過ぎると、すっかり慣れたようでおとなしく待っててくれるようになった。夜、寝る前にまだ目薬が済んでないときは催促するまでになった。犬はとても偉い。
この1年半の間、2回ほど脱臼して処置を受けた。飼い主にできることは目薬タイムを守ることと、脱臼したらすぐに処置に連れていくこと。朝の目の色チェックはすっかり習慣になった。脱臼すると「白っぽい」ではなく異常な白さなのですぐにわかる。年をとるといろんなところに不具合が出てくるのは仕方がない。これも個性のひとつとして日々を気楽に過ごしている。