MADE to STICK-12 私利私欲とアイデンティティ

Chapter 5: EMOTIONAL

EMOTIONAL : 「何が人を動かす力となるのか」を続けます。

前回人の心を動かすための3つの方法を紹介しました。今回は3つ目のappealing to identityについての話です。self-interest、自分に関係があったり興味があるものに心を動かされるというのはまあ当たり前のことなのですが、人は個人的な満足感だけを求めて行動するわけではありません。

The Popcorn Popper and Political Science (p187)

「ポップコーンポッパーと政治学」ポップコーンメーカーと言えばイメージが湧きますね。このタイトルでは何のことかわからないので読み進めてみると…消防隊員に『防火に関する教育プログラムを作成したのでレビューを依頼したい。レビューを承諾してもらえるならポップコーンメーカーもしくは高級包丁セットをプレゼントするのでどちらがいいか選んでもらえないだろうか。』この申し出に対して消防隊員は何と返事をしたでしょうか。

Do you think we’d use a fire safety program because of some #*$@%! popcorn popper?! (p188)

 

消防隊員は防火のプロです。安全な火の取り扱い方や火災が起きたときの行動の仕方はひとりでも多くの市民に知ってほしい。だから「報酬と引き換えにレビューをする」と思われるなんて見くびるな!オレをバカにするなという勢いです。

So, sometimes self-interest helps people care, and sometimes it backfires. What are we to make of this? (p188)

self-interestは人の心を動かすけれど、時に逆の結果をもたらすこともあります。政治的な視点から見ていきましょう。

If there’s a proposal on the table to raise the marginal tax rate on highest incomes, we expect rich people to vote against it and everyone else to vote for it. (p188)

 

高所得者への課税率を上げるという法案に対し、高所得者はみな反対しそれ以外の人は賛成を投じるかというテーマについて考えてみます。世論は必ずしも個々人のself-interstを集めた結果とはならないのです。では何が世論を形成するのでしょうか。

“Group interest” is often a better predictor of political opinions than self-interest. Kinder says that in forming opinions people seem to ask not “What’s in it for me?” but, rather, “What’s in it for my group?” (p189)

 

政治的なテーマに関しては人々は個人の利益ではなく自分が所属するグループにとっての利益を優先させる場合が多々あるようです。グループとは例えば人種や宗教、性別、勤め先の業種、などなど。時と場合によって所属するカテゴリは変化します。

「高所得者への課税率を上げる」というテーマに対して高所得者の人は自分への課税率が高くなることよりも国の(あるいは自治体の)税収が増えるということを重視する場合があります。これは「高所得者」カテゴリの利益ではなく「国民(あるいは住人)」カテゴリの利益を考えて出した結論です。消防隊員はプライベートの満足(家族が喜ぶとか)よりも「消防のプロ」カテゴリの利益を考えたから「バカにするな!」と怒ったのです。

つづく。