THE POWER OF HABIT-3 身についてしまった習慣を変える方法

一度身についてしまった習慣を変えるには何をしたらいいのか

NFLのTampa Bay Baccanees(タンパベイバッカニアーズ)、1996年頃の話ですが負け負け負けの弱小チームでこの16年間勝ったことがない。そんなチームに新しいコーチが就任しました。

彼のポリシーは「選手たちにはアメフトの基本の動作を忠実に実行してもらう。相手チームよりも素早いアクションができるように、頭で考えるのではなく状況に応じて自然と体が反応できるようになるまでトレーニングを続ける。」というものでした。

アメフトの動きをHabit Loopに当てはめると

  • cue:相手がパスをしようとしたり、マークしている選手が動き出そうとしているの認識すること
  • Routine:cueに対応するための動作(パスをもらいに動く、相手を止めようと動く、等)
  • Reward:パスを受け取る、相手のオフェンスを止める、タッチダウン等

が考えられます。

How it works : use same cue. Provide the same reward. change the routine. (p63)

勝てないバッカニアーズが強くなるためには今までと何かを変えなければなりません。コーチはcueとrewardは変えずに間のroutineを変えるよう選手たちに指示します。

to change a habit, you must keep the old cue, and deliver the old reward, you can shift the routine and change the habit. Almost any behavior can be transformed if the cue and reward stay the same. (p62)

習慣を変えたいときは(止めたいときは)cueとrewardそのままでroutineの部分を他の行動に変更します。「そのroutineはcravingを満たしているか?」の質問にYesと答えられるならそのroutineは正解。身についてしまった習慣を変えることができます。と著者チャールズは断言します。

habit changeの実例

代替routineを探すときにはcravingが何なのか見極めることが重要になります。cravingが満たされないといつまでたっても悪習慣を止められないのですね。

仕事中の休憩と称してついついドリンクスペースに行きお金を使ってしまうのを減らしたいとします。ドリンクスペースで何をしたいのかを考えます。喉が渇いているならドリンクを飲むのは正当な行動ですね。でも息抜きに誰かと話がしたいのだったらドリンクスペースに行かなくても同僚の席まで出かけて行って二言三言話しかけるだけでもしかしたらそのcravingは満たされるのかもしれません。

私の止めたい習慣の一つ「ついついメールチェックをしてしまう」を考えてみます。メールで仕事の連絡が来るのでチェックを全くしないのは難しいですが問題はメールチェックのあと。だらだらと届いていたメルマガを読んだり、メルマガに引用されているサイトを見に行ったりとそれまでの作業を中断しさらに無駄な時間を過ごしてしまう状況です。

この場合Habit Loopはこんな感じです。

  • cue : メール着信の音が鳴る
  • routine : メールチェックのあとにだらだらとネットやメールをしてしまう
  • reward : 本来するべき作業の時間が圧迫される(これは悪い結果を招くreward)、本来の作業から離れることによるリフレッシュ(こちらは良いreward)

次にcravingを考えます。本当に集中すべき急ぎ作業をしていればメールチェックを終えればすぐに作業に戻るはずです。作業が一段落したタイミングだったり疲れを感じていたとすれば、メールチェックの後の無駄時間というのは気分転換(あるいは逃避)のつもりで無意識に行う行為かもしれません。だったら自分で明示的に「ここで休憩」と宣言して本当に休んでしまえばいいのです。コーヒーを飲むとか少し歩いてみるとか。

というわけでまとめると(まとめたら当たり前すぎました)

  • メールチェックをするタイミングをあらかじめ決めておく
  • 1時間集中したら10分休むというように休憩のタイミングをあらかじめ決めておく

とすると「メールをチェックしなければ」と「気分転換」の両方がうまくいきそうですね。

プレッシャーとhabit change

新しいコーチの元で訓練を重ねバッカニアーズはやがて「常勝チーム」と言えるほど強い集団に変わりました。ここで一つ問題が。プレッシャーのかかる場面になるとそれまでできていた「習慣になったはずの無意識の行動」ができなくなってしまうのです。選手たちは忘れたはずの、封印した「思考」に悩まされることになります。「思考」のち「行動」ではどうしても相手の動きに遅れてしまうのです。

habit changeにはもうひとつ欠かせない要素があります。それは「believe」です。「習慣は変えられる」「自分にはできる」という強い気持ちが必要です。そして強い気持ちを持つためには同じ目的を持つ人たちが集まるグループに属することが効果的だそうです。

バッカニアーズの選手たちはある悲劇がきっかけとなって「強いbelieve」を持てるようになりそれまで以上に「強いチーム」となりました。どんな事件が起きたかは本書を読んでいただくとして、本章のまとめは次のとおりです。

if we keep the same cue and the same reward, anew routine can be instead. But that’s not enough. For habit to stay changed, people must believe change is possible. And most often, that belief only emerges with the help of a group. (p92)

ところで正直私はフットボールには全然詳しくないのですが、バッカニアーズの緊迫したゲームで作戦がうまくいくかどうか、選手が予定通り動くことができるかを夢中になって読んでしまいました。

この本、今まで登場したどの本よりも読みやすくて面白くどんどん読み進んでしまいます。洋書に初めてトライしようか迷っている方にはかなりお勧めしたい一冊です。

つづく。