シーザー・ミランのCesar’s Way-まとめ エクササイズとしての散歩と犬を落ち着かせるための散歩

犬にとって散歩は欠かせないエクササイズの一つ。それからもうひとつ、散歩には犬の不安定な心を落ち着かせる働きがあります。

エクササイズとしての散歩

家を出るのは犬が落ち着いてから

「散歩」という言葉をきくと興奮する犬は多いのでは? うちの犬もそうです。玄関へ飛んで行き早く首輪を着けて!とおねだりします。ですが興奮状態で家を飛び出すとトラブルを巻き起こす可能性があります。

ドアを開ける前に『伏せ』や『すわれ』をさせて犬が落ち着いたことが確認できるまで待ちます。テンションが高すぎていうことをきけないときはいったん家の奥まで戻ってからもう一度やりなおします。根気よく!

ドアから出るのは人間が先

シーザー的には家のドアは『境界 – boundaries』として特別に扱うべきもの。境界を超えるときは人の許可が必要ということを徹底します。出るときと同じように帰ってきて家に入るときも人間が先です。

犬は人の横または後ろを歩かせる

人間の前を歩かせていると犬は自分がリーダーだと勘違いします。弱気な態度の飼い主だったら犬は自分のご主人を守るために興奮したり警戒感を強めたり、他の人や犬とトラブルを起こすことも。犬が引っ張る問題は歩くときのポジションが原因なことが多いようです。人の横や後ろにいれば犬はリーダーに従う安心感から落ち着いて穏やかに散歩を楽しめます。

犬のペースではなく人間のペースで歩く、または走る

あくまでも『人間が犬を連れて歩く』スタンスを貫きます。犬的には匂いを嗅いだり寄り道をしたりといろいろやりたいことがありますが、家を出てしばらくは犬の希望を無視して人間のペースで人間の行きたい方向へ進みます。これは犬に『リーダーに従いなさい』と伝える行為です。少し時間が経てば犬はリードを持つ人の意志を理解するみたいで自然と横や後ろのポジションについて歩くようになります。そうしたら犬に『匂いをかいでもいいよ』とか『自由に歩いていいよ』といった許可を与えます。

ある程度自由にさせたらまたリードを持つ人の横や後ろにつかせてリーダーに従うモードに切り替えます。大切なのは犬に指示を出すのは常に人間だということ。散歩は『群れのルール』を犬に伝えるしつけの時間でもあるわけです。

散歩の回数や時間はどれくらい?

できれば朝のうちに1時間くらい歩いておくとほどよい疲れと満足感でその日を心穏やかに過ごせるそうです。犬種や年齢によって歩くペースは様々だと思いますが、距離や運動の強度よりも『コミュニケーションを取りながらある程度の時間を一緒に過ごす』という意味では1時間というのはちょうどいいように感じます。

うちの犬も10歳くらいからだいぶ歩くスピードが遅くなりました。かなりゆっくりですがそれでも40分から1時間くらいは喜んでついてきます。今頃の気候は気持ちがいいのでいつまででも歩いていたい気分なのですが、ここは標高が高いせいか日差しが強烈で黒毛の犬にとってはかなり暑いみたい。まだ夏前なのに時間帯やコースの日陰状況を考えながらのお散歩です。

そしておやすみまでの間にもう一度散歩に行ければ最高です。なかなか人間の都合があるので難しいかもしれませんが、夕方や夜に軽くエクササイズしてほどよく疲れて眠るのが犬にとっては理想みたいですよ。

遊びは散歩の後に

ボールやフリスビー、綱引きをして犬と遊ぶのはとても楽しいけれど、遊びを散歩の代わりと考えるのは間違いだそうです。

遊びは犬が興奮するイベント。犬に必要なのは落ち着いた穏やかな態度。落ち着いた穏やかな態度 – calm-assertive energy – は遊んでばかりでは身につきません。遊びは散歩に出かけて犬が落ち着いてからのご褒美と考えます。

犬を落ち着かせるための散歩

散歩には興奮しすぎた心を落ち着かせたり、不安などから神経質になっている心を鎮める働きもあります。そういう時の散歩は普段の散歩より短め、30分程度で状況はかなり改善するそうです。

こんなときは散歩をするといい

  • 動物病院やトリマーさんを怖がるとき、乗り物嫌いの犬なら乗り物に乗せる前に
  • ドッグランの中に入る前
  • 引っ越し

動物病院やトリマーさんを怖がるとき

病院やサロンに到着したら中に入る前に周辺を軽く散歩します。たぶん犬は家を出るときに『これから病院に行く』ことを知っているので、もし病院嫌いの犬なら道中はずっと緊張や不安でいっぱい。散歩が気分転換になって緊張感がほぐれます。車や飛行機を怖がる犬の場合も同じです。

ドッグランの中に入る前

ドッグランや親しい人の家に遊びに行く時は犬だってめいっぱい興奮します。そのテンションのままドッグランに突入してしまうと他の犬や人とのトラブルにつながります。楽しむ前には必ず犬を落ち着かせること。そのためにはやはり散歩がベストだそうです。

引っ越し

引っ越しはうちの犬も2回経験しています。突然知らないところに連れて来られた不安に加えて、人間がバタバタしているのを見てさらに不安を感じるようです。

シーザーのおすすめは、近所への転居なら実際に引っ越す前に周辺を何度か散歩しておくこと。そうすれば少なくとも『知らないところに連れて来られた不安』は解消できます。

新居に移ったら人間の方は一刻も早く片付けに取り掛かりたいところですが、まずは近所を一緒に散歩して新しい環境を犬に紹介するとともに、軽く体力を消耗させておけば人間が荷解きをしている間も落ち着いていられます。

それから、引越しはルールや境界を改めて教えるのにベストなイベントだそうです。家の中を自由に歩かせず、入ってもいい部屋やダメな部屋をひとつひとつ一緒に回りながら犬に教えます。

まとめ

シーザーの番組で見たこととこの本に書いてあることをうちの犬に試してみると、すぐに改善された問題がいくつかあります。犬が悪いのではなくて、私が犬への正しい接し方や指示の出し方を知らなかっただけなんだと気づきました。

世の中にしつけの方法や犬に対する考え方はたくさんありますから、子犬の頃はどうしていいかわからず途方に暮れることもありました。シーザーの手法には賛否両論あるそうですし、素人が実践することは現実的に難しいケースもあると思います。自分が納得できる方法を探して試行錯誤しながら犬と一緒に飼い主も成長していきたいですね。

この4月でうちの犬は11歳になりました。年齢的にはすっかりシニアですが新しいことは今でもどんどん覚えてくれます。いくつになってもしつけをするのに遅すぎることはないです。もし何か困っていることがあるなら、今すぐにでも改善に向かって行動することをお勧めします。

おしまい。

シーザー・ミランのCesar’s Way-3 エネルギーを発散させよう

シーザーの番組を見ていると、犬と人が幸せに生きていくためには『犬のエネルギーをどう扱うか』がキーなんだと思う場面がたくさんでてきます。

興奮は犬にとって好ましくない精神状態

うちのハリー君、尻尾を振っていても喜んでいるのではなく単に興奮しているだけという場面はしょっちゅう。しかも機嫌が悪いと興奮し何かが怖いと興奮する。瞬間湯沸器みたいです。

興奮しすぎた犬は

  • jumping up
  • panting ← 呼吸が激しくなること
  • can’t stop moving around

人に飛びつくのはよくないのですよー。犬が喜んでいるとか人への愛情表現だと誤解されがちだけれど。

犬同士が出会ったら普通はいきなり飛びついたり走り回ったりせず、まずお互いの匂いを嗅いでお互いの立場を決定します。そのあと相性がよければ遊ぶこともあるし何事もなく立ち去ることもある。

この視点で考えれば人にいきなり飛びつくことはかなり問題であることがわかります。人に会う時は「落ち着け」と教えないといけない。

But they need manners to greet visitors with. Dogs don’t greet other dogs by juming all over them. They greet one another by sniffing. If that etiquette is good enough for the dog world, it’s certainly good enough for your home. (No.2052)

 

遊びの中で飛びついたり嬉しくて跳ね回ることが悪いのではなく、犬にもT.P.O.をわきまえさせなさいということですね。

分離不安

うちの犬は子犬の頃から分離不安気味。長時間のお留守番はかなり苦手で、特に朝かまってあげずに外出するとかなりの頻度で嘔吐してしまいます。

犬は飼い主が発するエネルギーからその日の飼い主の行動予定を探り当て一喜一憂しているようです。もうじき飼い主は自分を置いて出かけそうだとか、今日は自分のお気に入りの場所につれていってもらえそうだとか。

うちの犬でいつも感心するのは、徒歩なのか車なのかを知っていること。何も教えてないのに車に乗るときはちゃんと車の前で待ち「乗せて」と言います。『飼い主のエネルギーを読み取ってる』は真実のような気がします。

不安にさせないためには

  • 留守番の前にたくさん運動させる
  • 運動の後に朝ごはんを与える

運動させて犬のエネルギーを発散させます。疲れておなかいっぱいになると眠くなります。リラックス状態にしてあげれば不安を感じずにお留守番ができます。

ハリーを迎えた頃は午後からの仕事をしていたので散歩遊びその他はすべて午前中のルーティンで、たまに遊ばずに朝から出勤すると必ず情緒不安定でしたね。たまたま仕事の都合でそうなったのですが、出かける前に散歩や遊びをさせていたのはハリーの精神状態にとって結果的に正解だったとわかりホッとしています。

落ち着くために先にエネルギーを発散させる

興奮しすぎたり、何かの恐怖症だったり、攻撃的だったりと他にもいろんな犬の問題行動があります。シーザーによると、エネルギーがちゃんと発散できないと犬は心のバランスを欠きあまり幸福とはいえない精神状態になってしまうそうです。

エネルギーを発散させるのに一番いいのはやっぱり散歩。大型犬なら自転車で伴走するくらいがちょうどいいのかな。シーザーの番組ではエネルギッシュな犬をローラーブレード履いたりトレッドミルに乗せて走らせているけれど、日常的にあれくらいの強い運動が本当は必要なのかもしれないと思います。いかにもアメリカ的ではありますが。自宅にトレッドミルを持ってる人はそんなにいないでしょう。

それと、『遊び』- 綱引きや宝探しなど – は散歩(ランニング的散歩)の代わりにはならないそうです。満足感は得られても散歩に比べると体のエネルギーはたいして消費しないので、どうしてもエネルギーが余ってしまうとのことです。

つづく。

シーザー・ミランのCesar’s Way-2 リーダーの資質とフォロワーの資質

犬の群れを人間の組織に例えてみます。組織を存続・発展させていくうえで大切なのはメンバーの役割や組織のルールを決めること。そしてメンバー全員がルールに従って行動することです。

組織には必ずリーダーが必要で、リーダー以外のメンバー(フォロワー)は原則としてリーダーの決定に従います。犬はリーダーやフォロワーをどのように決めているのか、人間の場合と比較してみていきます。

人間の場合

Think about our own species, and the percentage of people who would like to have the power and perks pf the president, or the money and goodies of a Bill Gates. (No. 1517)

 

人間社会の中で『リーダー』といえば、国のトップである大統領や首相。あるいは著名な企業の創業者が思い浮かびます。ビルゲイツやスティーブ・ジョブス、日本ではソニーの盛田さん、本田さんなど(いつもエレクトロニクス系の企業ばかり出てくるのはなぜだろう)。

『カリスマ』と呼ばれる方々はみんな『リーダー』の資質を持っています。優れた技術や努力について語られることが多いですが、他人を引きつけるオーラやパワーが強く人としての魅力にあふれているはずです。

強いパワーを持ちリーダーシップを発揮できる人は少数で、多くの人はリーダーから学び、リーダーを支持するフォロワーです。誰もが激務やプレッシャーに強くプライベートを犠牲にして世のために働き、多くの人から支持される資質を持っているわけではありません。人間の場合『リーダーorフォロワー』は生まれながらのものなのか、育った環境によるものなのか、どちらなんでしょう。

もちろん『リーダー気質』の人が必ずしも社会的にリーダーの立場にいるとは限りません。社会的な立場に関わらず『リーダー気質』の人は、その人が放つ『エネルギー』が高いのです。

犬の場合

犬の性質は生まれたときにすでに決まっているようです。犬には『リーダー気質の犬』と『フォロワー気質の犬』の2つの性質があります。群れ(pack)の秩序を保ち、群れ全体が幸せに生きられるように犬はどちらかの役割を持って生まれてきます。

Every pack has its rituals.

Most important, the pack always has a pack leader. The rest of animals are followers. (No.1498)

 

生まれてすぐの子犬にとって最初のリーダーは母犬です。3~4か月を過ぎると母犬から離れ群れのリーダーに従います。その頃には子犬の行動に生まれ持った性質が現れるようになり、それぞれの犬が持つ性質とエネルギーの強さによって群れの中での順位や立場が決まります。

人間の場合と同じようにほとんどの犬は元来『フォロワー』です。フォロワーはリーダーが用意してくれるルール・境界・制限に従って安心して生きることを望んでいます。

リーダー気質の犬

群れのリーダー(pack leader)は群れ(pack)の全ての行動に責任を負い、決断する役割を果たします。リーダー気質を持って生まれてきた犬はより強いエネルギーを持つリーダー気質の人間でないとうまくつきあっていくのは難しいようです。

見た目には

  • head alert
  • chest forward
  • ears up
  • tail stiff – 尻尾がぴんと立っている
  • swaggers – 堂々としている

のような特徴があります。(No.1545)

フォロワー気質の犬

  • heads in line with their bodies or down
  • stay behind the pack leader while traveling – 移動するときはリーダーの後ろを歩く
  • ears relaxes or back
  • tails wagging but always kept low – 尻尾は低い (No.1536)

フォロワー気質の犬はリーダーに対して『リーダーの存在や指示は絶対的なもの』と信じています。リーダーの座を奪おうなんてこれっぽっちも考えていません。

毅然としたリーダーになろう

ほとんどの犬がフォロワー気質を持っているなら飼い主は犬から信頼されるリーダーの役割を果たさなければなりません。飼い主が頼りないとフォロワーの犬は不安を感じ、精神のバランスを欠いたおかしな状態になってしまいます。

リーダー気質の犬がいつも堂々としているように、飼い主も堂々としていると犬は安心するようです。『私についてこれば君は安心だよ』という気持ちや態度は犬に伝わります。

散歩の仕方を変えてみた

うちの犬、散歩に行くとwalkingというより探し物に忙しく、匂いをかぐばかりでなかなか前に進まない。掃除機のようです。(シーザーのテレビでは『宝探しスタイル』と呼んでました)

この本を読んでから『リーダーは毅然としなければ』と思い散歩中は犬の都合に合わせず私の行きたい方へ私のペースで歩くようにしました。それまで使っていた伸びるリードを短いものに変え、下(犬)を見ないで前を向きます。

犬には必ず私の後ろを歩かせ(フォロワーはリーダーの前に出てはいけない)犬が寄り道しようとしたら『そっちじゃないよ』とリードで合図を送ります。すると犬はすぐに『ああそうだった』と歩くことに集中してくれるんです。

数日のうちに新しい散歩の仕方にすっかり慣れたのか、犬も下でなく前を向き、しっぽは↑にあるように水平に保たれおだやかに揺れます。寄り道もなくなり私の後ろをトコトコついてきます。上手に歩けるようになってから距離がかなり伸びエクササイズとしての散歩ができるようになりました。

ちょっとしたことでこんなに変わるなんて!10年間も掃除機スタイルで散歩していたのに。普段はこんな感じで淡々と歩いてますが、公園に遊びに行ったら長いリードで自由に探検させています。『今は飼い主の後を歩く時間』『今は自由に歩き回る時間』というこちらの意志がちゃんと伝わっているようです。

つづく。

シーザー・ミランのCesar’s Way-1 犬の心理的な問題のほとんどは飼い主に原因がある

 

Cesar’s Way
– The Natural, Everyday Guide to Understanding and Correcting Common Dog Problems

著者

シーザー・ミラン

スカパー!のナショナルジオグラフィックチャンネルで『ザ・カリスマ ドッグトレーナー』として人気のドッグトレーナー。番組では問題を抱えた犬をリハビリしたり、保護施設の犬に里親を探したりと大活躍。

概要

シーザーの信念「I rehabilitate dogs, but I train people. 」- 飼い主には訓練を、犬にはリハビリを – といった番組でおなじみの手法や、シーザーがトレーナーになったきっかけなど。

原書

邦訳版

目次

  1. Growing Up with Dogs
  2. If We Could Talk to the Animals
  3. Dog Psychology
  4. Power of the Pack
  5. Issues
  6. Dogs in the Red Zone
  7. Cesar’s Fulfillment Formula for a Balanced and Healthy Dog
  8. “Can’t We All Just Get Along?”
  9. Fulfilling Our Dogs, Fulfilling Ourselves

犬の問題行動のほとんどは飼い主に原因がある

番組には犬のいろんな問題行動(かみつく、吠え立てる、攻撃的、支配的、飼い主の言うことを聞かないetc..)に頭を抱える飼い主が登場します。シーザーのアドバイスに従って飼い主が犬に対する態度をほんの少し変えると犬が劇的に変化します。ほんとに『ちょっとしたこと』で『劇的に変身』するので毎回楽しみに見ています。

番組からヒントをもらって私もうちの犬に対してほんの少し態度を変えたことがあるのですが、見事に犬は変身してくれました。びっくりです。何を変えたか…は改めて書きたいと思います。

I rehabilitate dogs, but I train people.

犬が問題をおこすのは人間と犬の関係がうまくいってないから。少なくとも犬にとっては人間と望ましい関係を作ることができていないから。

つまり人間(飼い主)に『犬の心理』を教え、犬に対する正しい態度を身につけられるように訓練するのが『I train people』。そして人間と望ましい関係を築けずに病んでしまった犬の心を本来の犬らしい状態に戻すための『I rehabilitate dogs』。これがシーザー流のやり方です。

犬の飼い主に最低限必要なこと – rules, boundaries, limitations

  • 飼い主が強いリーダーシップを持つ ← いちばん大事
  • ルールと境界を決める
  • 制限についてのしつけをする

どうしてこれらが重要なのか。それは犬が『群れ社会に生きる動物』だから。群れ社会には群れを維持するためのさまざまなルールが必要で、ルールが曖昧な状態に置かれると犬は混乱するのです。

犬の心理的な問題はこの混乱が原因。飼い主がリーダーシップを持ちrules, boundaries, limitationsを徹底すると、犬の心は穏やかに安定し良い方向に向かいます。

Most of the cases I handle involve dogs who simply need stronger leadership from their owners plus rules, boundaries, limitations, and consistency in their own homes to become better. (No.288)

 

つづく。