MADE to STICK-最終回 知りたかったことに答えてみる

MADE to STICK最終回です!

「この本から知りたいこと」を振り返ろう

  • STICKとは何か → 人の心に印象付けるために必要な6つの要素
  • 自分に「STICK」できた経験はあるか → これは相手に聞いて見ないと何ともですが、自分のアイディアが上司に採用されたりお客様が期待した行動を取ってくださったりという経験はあるので、時と場合によって意識しないうちにSTICKできたこともあるのでしょう。
  • STICKすると良い点は? → 良い点ばかりですね。コミュニケーションという観点から考えるとSTICKできてない状態というのは時間や労力の無駄遣いであると言えます。
  • STICKしないと困るのか? → この本を読んだ後では自信を持ってYES!と答えます。
  • 誰のためのもの? → コミュニケーション術ともいえるためあらゆる人のものでしょう。

終わりに

一言でいえば楽しい本でした。親しみやすい語り口ですし、結構身近な例もたくさん出てきます。アメリカに住んでいるわけではないのでピンとこない部分もありますがそれを差し引いても読み物として十分楽しかったですね。

人に何かを教える立場の人にもぜひ読んでもらいたいと思いました。学校の先生やインストラクターといった仕事は、教える側と教わる側にある種の信頼感が生まれるまではなかなか「教えたいこと」を伝えても響かないという難しさがあります。最後のSTICKY ADVICE のTEACHING THAT STICKS (p266-) に日々の仕事に早速活用できそうな、教えることに従事する人に向けてのページがあります。もっと早くこの本に出会っていれば私自身仕事の進め方が今とは違っていただろうと思っています。

おしまい。

MADE to STICK-17 相手の心をつかむ3つのキーワード

STICKY ADVICE

最後の章は「STICKY ADVICE」。著者からのアドバイスです。

重要な3つのキーワード (p264)

トップの方針をメンバーに伝える際に抽象的なスローガンを掲げても意味がないです。

何かを伝えたいとき。通り過ぎようとしている人を振り向かせたいとき。メッセージを響かせたいときにはSUCCESsのうち3つのキーワードが有効です。

Be concrete.

– The beauty of concrete language – language that is specific and sensory – everyone understands your message in a similar way. (p264)

 

とにかく「具体的に」。P113のThe Path to Abstraction : The Blueprint and the Machineのところに戻ってConcreteのおさらいをしましょう。Concreteはここここにもあります。

Say something unexpected.

相手の注目をひきつけよう!その戦略の新しい点は?何が今までと違う?

we have to understand two essential emotions – surprise and interest (p65)

p72のHension and Phraugにもいいことが書いてあります。過去記事のUnexpetedはここ

Tell stories.

A good story is better than an abstract strategy the statement. (p264)

 

誰に何を訴えたいのか、ターゲットと目的によってふさわしいストーリを選ぶのが効果的でしたね。過去記事Storyのこちらで取り上げています。簡単にまとめると下記のとおりです。

  • THE CHALLENGE PLOT – 困難なことに挑戦したりコツコツ努力をつつけることによって大きな成果を残すストーリー
  • THE CONNECTION PLOT – 異なる主義や立場の人(宗教や民族、階級など)たちがその立場を振り切って深いつながりを持つストーリー
  • THE CREATIVITY PLOT – 新発見や発明などわくわくするストーリー

つづく。

MADE to STICK-16 そのアイディアはstickできてる?

Epilogue : WHAT STICKS

今日はまとめの章に入ります。INTRODUCTIONで「WHAT STICKS?」→STICKってなんだろう?という掴みから始まったこの本ですがEPILOGUEで再び「WHAT STICKS」同じ言葉が登場します。ここでは「STICKするということ」といった意味合いでしょうか。

Making an Idea Stick : The Communication Framework (p246)

SUCCESsが人々に心にどのように働きかけるかをおさらいしましょう。

  1. Pay attention : Unexpected
  2. Understand and remember it : Concrete
  3. Agree / Believe : Credible
  4. Care : Emotional
  5. Be able to act on it : Stories (p246-247)

あれ、キーワードは6つあったはず。ひとつ抜けていることに気づきましたか?「Simple」はどの場面にも必要な一番大切なキーワードです。

例えば「自分のアイディアを信じてくれるだろうか?」と検証するよりも「Is it concrete ? (そのアイディアは具体的だろうか)」を検証したほうが効果的です。

「関心を持ってもらえるだろうか?」を検証するより「Is it emotional ?」を検証したほうが効果的です。

抽象的な言葉は受け手によってさまざまに解釈されます。頑張ってあれこれ説明したあげく「信じてよ!」とお願いしても具体的な話が見えなければ相手は返答に困ってしまいます。一方「Emotional」な言葉で語られたストーリーには大抵の人は興味をもって耳を傾けてくれるはずです。

こんなふうにアイディア(伝えたいこと)がSUCCESsの要素に合致するか検証を進めていけば当初のアイディアをStickyなものへ進化させることができます。

John F. Kennedy versus Floyd Lee (p250)

できればこの本を手に取ったら最初に目を通してほしい部分です。本を途中から読むのが嫌でなければ。それから始めに戻って読み進めると理解がよりスムーズになります。ここには全編を通して出てきたたくさんの話のあらすじがまとめてあります。「なんだっけそれ?」と思う部分は該当する個所に戻って確認するといいですね。

そしていよいよ本書の結論が最後に述べられています。

All these people distinguished themselves by crafting ideas that made a difference. They didn’t have power or celebrity or PR films or advertising dollars or spinmeisters.  All they had were ideas.

And that’s the great thing about the world of ideas – any of us, with the right insight and the right message, can make an idea stick. (p252)

 

つづく。

MADE to STICK-15 ナレッジマネジメントとstory

Chapter 6: STORIES

STORIES、続けます。

Stories at the World Bank (p231)

By the end of the year, the president had announced that knowledge management was one of the bank’s top priorities. (p235)

 

「社長は『銀行の最優先課題のひとつにナレッジマネジメントを位置付ける』ことを発表した」。この節の結論なんですが、この結論を出すまでの過程には何があったのでしょうか。

ナレッジマネジメントは日本語でも普通に使われている言葉ですね。個々人の知識を共有し組織の経営資源の一つとみなす考え方です。今ではすっかり当たり前の概念ですが時は1996年にさかのぼります。世界銀行(World Bank)にStephan Denningという人がいました。

彼はアフリカのプロジェクトを担当することになったものの事情により前任者からの引き継ぎがなく自分でプロジェクトに関する情報を集めなくてはなりません。銀行内には開発途上国での様々な活動の成果があるはずなのにそのノウハウはあちこちに散らばったまま。情報は下記のようにそれぞれのプロジェクト内に管理されていました。

A water-treatment guru in Zambia might have figured out a great way to handle local political negotiations, but he was unlikely to have the opportunity to share it with a highway-construction guru in Bangladesh. (p232)

 

1カ月ほどたったある日、ザンビアから戻ったばかりの同僚とお互いの近況報告をします。ザンビアでマラリアが大きな問題となっていたときにその同僚はインターネットでthe Centers for Disease Control (CDC : アメリカ疾病予防管理センター)のサイトを探し当て、マラリヤ対策に非常に有益だったという話をしてくれました。現在では「google先生に教えてもらおう」は普通の行動ですが当時は1996年、今から20年も前です。この同僚の話はDenningに大きなヒントをもたらします。

Later, it dawned on him that the Zambia story was a perfect example of the power of knowledge management.…That’s the vision of knowledge management – except that the health-care worker shouldn’t have been forced to conduct a trial-error search, ending at the CDC’s website, to get the right information. He should have been able to tap the knowledge of the World Bank.  (p232)

 

同僚が試行錯誤しながらCDCのサイトにたどり着いて解決策を見つけたように、銀行の内部に様々な部門やプロジェクトのノウハウ・情報が一元管理されていれば、ずっと仕事がしやすくなる、そんなアイディアがDenningの頭に浮かびます。ナレッジ・マネジメントのイメージができあってきました。そしてそれはできるだけ早く着手すべき優先度の高い問題だと考えるようになりました。

しばらくしてDenningは銀行のsenior managerたちに向けてナレッジマネジメントのアイディアをプレゼンします。持ち時間は10分。

First, Denning set up the problem : the difficulties that the World Bank had experienced in pooling its knowledge and the sorry state of its imformation systems. (p233)

 

普通ならナレッジマネジメントの重要性や、どのようにシステムを構築すべきかの具体例などがこの後に続くと思いがちですが、Denningが語ったのはザンビアの同僚が教えてくれた「インターネットから得た情報で問題を解決した」ことでした。そうです、彼は「STORY」が持つパワーを用いたのです。

冒頭の一文はこれを聞いたmanagerの発言でした。

…And then he had a happier thought. “How wonderful! They’ve stolen my idea. It’s become their idea!” (p233)

 

つづく。

MADE to STICK-14 心を動かすstory

Chapter 6: STORIES

楽しい、面白い、驚き、感動的な話は人々の心を捉えます。これまで登場したSIMPLE、UNEXPECTED、CONCRETE、CREDIBLE、EMOTIONALを感じさせるSTORIESとはどんなものか見ていきましょう。

The Art of Spotting (p224)

How do we make sure that we don’t let a great idea, a potential Jared, float right under our nose? … We have to consciously look for the right ones. So shat is it, exactly, that we should look for? (p224-225)

 

Jaredは前の節「Stories as Inspiration : The Tale of Jared (p218)」で出てくるサブウエイのサンドイッチを食べ続けて3か月で体重を45kg落とした青年の名前です。

「サブウエイのサンドイッチを食べ続けて3か月で体重を45kg落とした」と聞いたらあなたは何を感じますか?

  • サブウエイのサンドイッチはそんなにヘルシーなの?
  • 45kg落とすって前は何kgだったの?
  • 食事だけで痩せたの?運動は?

などなどいろいろと想像してしまいます。ニュースサイトの見出しだったら思わずクリックしそうです。でも自分が伝えたいことがいつもセンセーショナルな出来事とは限りませんね。人々の注意を引く3つの要素を考えてみます。

1. THE CHALLENGE PLOT (p226)

CHALLENGE PLOT、つまり「ガイヤの夜明け」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」といった番組。「困難なことに挑戦したりコツコツと継続して大きな成果を残す」ストーリーは感動を呼びます。

The key element of a Challenge plot is that the obstacles seem daunting to the protagonist. Jared slimming down to 180 pounds is a Challenge plot. Jared’s 210-pound neighbor shaving an inch off his waistline is not. (p227)

 

「Jaredが痩せてついに80kgになったんだって。前は190kgもあったのに。」と聞くと、誰もが「それはすごいな。努力したんだろうな。どうやって痩せたんだろう。」と思います。Jaredという人を知らなくても。でも「Jaredの家の隣のおじさん、95kgあるらしいんだけど、最近ベルトの穴1つ分痩せたんだって」といわれてもあまりピンとこないというか、そんなのよくわかんないと思われるのが関の山です。「困難を克服した」とは感じないからです。

2. THE CONNECTION PLOT (p227)

CONNECTION PLOTは簡単に言うと「異なる主義や立場の人たちがその立場を振り切って深いつながりを持つ」というストーリーです。シェイクスピアのロミオとジュリエット(両家の対立)、タイタニック(娘と青年の身分の差)など切ない「許されざる恋物語」はこのカテゴリになります。原文では以下の通り。

It’s a story about people who develop a relationship that bridges a gap – racial, class, ethnic, religious, demographic, or otherwise. (p228)

ところでこのCHARENGE PLOTとCONNECTION PLOT、人に伝えるときにそれぞれふさわしい場面があります。会社のイベントでスピーチするとしたら、もしそれがキックオフの会場なら当然CHARENGE PLOTが有効でしょう。そしてそれがクリスマスパーティーだったら心温まるCONNECTION PLOTにみんな感動してくれると思いませんか?

3. THE CREATIVITY PLOT (p229)

ニュートンが木から落ちるリンゴを見て万有引力について閃いたように、誰かが新しい発見をしたり画期的な改良製品が発表されたりといったような「わくわくする新しいこと」がCREATIVITY PLOTです。

Creativity plots make us want to do something different, to be creative, to experiment with new approaches. (P230)

結論

The goal here is to learn how to spot the stories that have potential. (p230)

 

日常生活の中で何かに感動した時、それは3つのPLOTに当てはまらないかを考えてみましょう。例えばそれがCONNECTION PLOTだったら、現実に自分がCONNECTIONに関する問題に行き詰っているのかもしれません。もしそうならそのストーリーには問題解決のためのヒントがあるかもしれないよ、と著者は締めくくっています。

つづく。